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【読書メモ】『世界の未来』エマニュエル・トッドほか

家族システムを基盤にした民主主義のタイプ


民主主義は、「リベラル」「垂直型」「権威主義的」「共同体型」など、家族システムのタイプによって分類できる。

民主主義の起源は「排外性」


民主主義には、その根本において「排外的」「人種差別的」な面がある。

 

歴史のかなたにあった小さなグループの民主主義は、いくらか排外的だった。排外的だった理由は、ほかの小さなグループに対抗するため小さなグループが組織されたという成り立ちがあるからである。排外性は民主主義と反対のことではなく、むしろ民主主義の起源である。民主主義の排外性は、移民の受け入れ拒否とも密接につながっている。日本は排外的だといわれるが、実際は日本は本当に民主主義的である。

ロシアは民主的意志でプーチン独裁を支持している


ロシア人の教育水準は高く、選挙もあり人々は投票をしている。いくつかの大きな都市ではプーチン大統領は少数派になるところもあるが、全体としてはプーチン体制は圧倒的な支持を民主的な投票で得ている。それは日本の自民党よりも高い。

 

民主主義といっても多様で、その地域の家族システムのタイプによる人々の基質によって違いが出る。ロシアの人々は、政権を交代する民主主義を望んでいない。民主的に望まれたことでそれは矛盾ではない。

日本もまた民主的意志で自民党一党体制を望んでいる


日本の自民党一頭体制も民主主義に矛盾していない。日本の家族システムは長男に対して絶対的な権力が譲渡される。長男に任せておけばいいという風潮がある。これは選挙においても日本人は政治家や官僚、エリートに権力を譲って、あとはエリートに任せておけばいいということである。

 

日本の大衆はアメリカ人のような共和党と民主党のような対立を望んでいないことははっきりしている。政権交代による統治をのぞんでいない。

民主的意志を無視するEUは非民主主義社会


最も今、民主主義的でないのはEUなのです。人々が投票しているのにそれが考慮されない。例えばフランス人たちはEU憲法の批准に「NO」と投票したのに、エリートたちがアレンジして別のもののようにして通してしまった。国民が望んでいる行動を政府が受け入れていないのが今のEUなのです。フランスは通貨をコントロールできずドイツに従うばかり。事実上民主主義国といえない。

トランプは民主主義への脅威ではない


ヨーロッパ人はトランプを「民主主義に対する脅威」という。でもそれは、大衆が間違えているという意味になるので、民主的とはいえない。ヒトラーは民主的に選ばれたから脅威だと答える人はいるがそれは間違いだ。ヒトラーは35%以上の民主的な票を集めていない。ヒトラーはクーデターを起こして政権を掌握した。トランプとの選ばれ方と異なる。

人口動態視点で見ると確信を持って中国は崩壊する


中国については迷いがない。人口動態研究者として見るなら、中国はうまくいきそうにない。中国は極めて急速に老いている。中国についてほんとうによく理解されていないことは、人口動態でのカタストロフィがどれほどのものになるかということ。

 

13億5000万人の人口の抱える国の人口動態危機なんて、だれもまだ見たことがない。ぎりぎりになって移民政策で問題を解決しようとしても無理である。

 

日本はそれでも人口でいうと1億2500万人です。瀬戸際に追い詰められればギリギリ日本は均衡を回避できるかもしれないが、中国の13億人は想像できない。

そもそも階層社会・不平等社会の原因は「高等教育」にある


教育が社会の階層化を進めて民主主義を損ねている。識字率の普遍的な広がりは、人間は平等だという潜在意識を作った。しかし、中等教育と高等教育の発展は、階層化された社会をつくった。

 

それぞれの社会には、30%か40%、50%といった割合で高等教育を受け、自らを社会の中で上の方にいると考え、同じような学歴の人々に囲まれて暮らす人達が出てきた。このことが、ポピュリズムとエリート主義が対立する理由になった。高等教育のせいで、人々に「平等ではない」という潜在意識をともなう社会に移ってきた。トランプを支持しているのは教育レベルがもっとも低い人々だった。

 

現在のエリートは国の体制順応者


現在の高等教育は知性だとか創造性とかを発展させるための教育ではなくなっている。高等教育はむしろ体制順応主義、服従、社会規範の尊重などを促すだけの教育になった。最も良い教育を受けた人は、どんどん知性的でなくなっている。

 

フランスが代表的である。フランスの国家中枢につく人たちは、エリート校のグランド・ゼコールで学んでいます。そんな人達が指導しているフランスが経済的にも政治的にも失敗し、強い隣国ドイツに従属する状態にある。