【読書要約】ドイツ帝国」が世界を破滅させる エマニュエル・トッド

「「ドイツ帝国」が世界を破滅させる」エマニュエル・トッド

日本人への警告


概要


「ドイツ帝国」が世界を破滅させる」は2015年5月20日に文藝春秋から刊行されたエマニュエル・トッドの著書。インタビュー形式。冷戦終結とEU統合によって生じた「ドイツ帝国」は、今や政治的パワーを持ち、このまま拡大すればアメリカやロシアと衝突しうるとトッドは話す。

 

あまり日本人には聞き慣れない言葉である「冷戦後に発生した「ドイツ帝国」」の現状をここでは解説する。

1.ドイツ中心のEU参加国「ドイツ帝国」


冷戦の崩壊とともに新たな「ドイツ帝国」が誕生。新しい「ドイツ帝国」の形態は、トッドによればドイツを中心としたEU参加国であるという。

 

2.経済的覇権を握ったドイツ


 EUの東方拡大によってドイツは、かつて共産主義だった国々の教育の高い住民を労働力として取り込みドイツ経済を活性化。部品製造を部分的にユーロ圏の外の東ヨーロッパへ移転して、非常に安い労働力を利用した。ここ5年で経済的にも政治的にヨーロッパ大陸のコントロール権を掌握した。

 

一方、ドイツ国内では競争的なディスインフレ政策をとり、給与総額を抑制。こうして賃金抑制策など考えられないユーロ圏の他の国々に対して、競争上有利な立場を獲得。ユーロのためにスペイン、フランス、イタリアその他のEU諸国は平価切り下げを構造的に妨げられ、ユーロ圏はドイツからの輸出だけが一方的に伸びる空間となった。

  

こうしてユーロ創設以来、ユーロの果実はすべてドイツが受け取ることになり、ドイツとそのパートナーの国々との間の貿易不均衡が顕著化。さらに、ヨーロッパ債務危機でドイツは欧州全域の債権者となったため、各国ともドイツに文句が言えず隷属する状態となった。ドイツと欧州各国との間で上下関係が成立したこと。これがドイツ帝国である。

  • 旧共産圏の有能な安い労働力をフル活用
  • ディスインフレ政策
  • EU諸国の債権者

3.ドイツの軍事コストはほぼゼロ


アメリカのおかげでドイツにとって軍事的支配のコストはゼロ。アメリカの軍事力がNATOをバルト海諸国やポーランドやかつての共産圏諸国にまで拡大したことは、ドイツを丸々守ってくれることでもある。

 

4.現在のドイツは人種差別時代のアメリカ


ドイツ国民だけを見ると経済的不平等の格差は程度が低い。しかし、ドイツシステムをEU全体で観察するといちじるしく不平等な支配システムが生まれつつある。平等性はドイツ人だけのことだ。ドイツとEU諸国民の間でヒエラルキーが形成されている。それは、ドイツ人たちを人種差別時代のアメリカにおける白人たちのように見ることができるだろう。

 

アメリカでは、白人グループ内部の平等が、アメリカ原住民および黒人に対する支配によって保障されていた。置き換えると今のEUはドイツ人の平等がほかのEU諸国に対する支配によって保障されているということである。ギリシャ人やその他の国民は、ドイツ連邦議会の選挙では投票できない。

5.ドイツと対立しはじめる国々


「ドイツ帝国」の人口、実質GDPは、既にアメリカのそれらを上回り、アメリカと十分対抗できる力を持っている。さらにアメリカによるスパイ行為の問題を使って最近はアメリカにぶつかり始めた。ドイツが反米にアグレッシブになってきている。

 

またロシアとは潜在的戦争状態に入っている。理由はウクライナ問題。言語と文化とアイデンティティにおいてロシア系であるウクライナ東部が攻撃されており、その攻撃はEUの是認と支持をされているため。

 

イギリスは「離脱途上」。なぜならイギリス人たちは、ドイツ人に従う習慣を持っていないため。イギリス人たちはドイツ人に従うよりも「英語圏」、つまりアメリカやカナダや旧イギリス植民地の世界に属している思っている。(2016年にイギリスはEU離脱決定)。

6.上に立つと精神不安定化するドイツ


ドイツの権威主義的文化は、ドイツの指導者たちが支配的立場に立つとき、彼らに固有の精神的不安定を生み出す。ドイツは支配的状況につくと、彼らは非常にしばしば、なぜかみんなにとって平和でリーズナブルな未来を構想できなくなる。彼らは自分たちが1番上にたったとき、より弱い者による服従の拒否を受け入れることが非常に不得意となるのだ。

 

ドイツは歴史上、支配的なポジションについたときに変調した。特に第一次世界大戦前、ヴェルヘルム二世の統治下でビスマルク的理性から離れ、ヨーロッパでヘゲモニーを握ったときがそうだった。今日の状況は、ナチス勃興の頃よりもヴィルヘルム時代のほうに類似している。

 

この傾向は今日、輸出への偏執として再浮上している。イギリス人に対する、またアメリカ人に対する軽蔑。どのようにしてドイツは悪い方向へ転回していくのだろうか?毎週のようにドイツの態度がラディカル化されているのが現状だ。