【読書要約】「大世界史」池上彰 佐藤優

「大世界史」池上彰 佐藤優

現代を生きぬく最強の教科書


概要


「大世界史」は2015年10月20日に文藝春秋から刊行された池上彰と佐藤優の共著。2015年の国際情勢を対談形式でやさしく解説している。

 

世界各地の動きをより着実にとらえるために、長いスパンの世界の歴史を参照しながら現在の国際情勢を分析・言及しているのが本書の特徴である。そのため内容は国際情勢の解説でありながらも“世界史”というタイトルがつけられいる。

 

本書で論じられる内容は、中東情勢、トルコ、中国、EU、ロシア、アメリカ、沖縄問題、世界の核問題など多岐にわたるが、本書のなかから常に「世界史大転換の震源地」だった中東周辺に関する記事をまとめた。

1章.中東における4つの勢力


中東は「世界史大転換の震源地」であり、ここで端を発した変動が、その後に全世界に大きな影響を与えている。中東はユーラシア大陸の真ん中に位置しており、宗教的に見ると、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教という世界三大宗教の聖地があり、エネルギー資源の面でも重要な場所である。

 

現在の中東を俯瞰すると4つの勢力にわけられる。

 

●第一勢力「アラビア語を使うスンニ派のアラブ諸国」

分布地域:サウジアラビア、カタール、クウェート、バーレーン、アラブ首長国連邦。

 

●第二勢力「ペルシャ語を話すシーア派イラン」

分布地域:イラン。

 

●第三勢力「アラビア語を話すシーア派のアラブ人」

分布地域:イラクのシーア派政権、シリアのアサド政権、レバノンのヒズボラ、イエメンのシーア派フーシ勢力。これらはイランが支援しておりイラン帝国を築きあげている。

 

●第四勢力「スンニ派だがトルコ語を話し、民族意識も強いトルコ」

分布地域:トルコ。

 

 

この4つの勢力が中東情勢は動いており、これにプラスアルファするかたちで、スンナ派過激派のイスラム国が存在する。イスラム国の主要な狙いはシーア派の殲滅。

 

 

2章.イランとトルコの対立が激化


1960年代から80年代頃まで、中東世界は石油の力でアラブ諸国(※第一勢力)が主導していたが、アラブが弱体化し、アメリカの影響力も弱まる中、過去の2つの帝国、すなわちトルコ(※第四勢力)とイラン(※第二勢力)が現在再び擡頭している。

 

トルコがシリアのアサド政権(※第三勢力)を攻撃する理由は、アサド政権の背景にイランが存在することである。トルコはイランの勢力がシリアにまで及んでいることに警戒しており、それはオスマン帝国とペルシャ帝国の対立となる。

3章.ついにイランは核カードを所持した


2015年は核というパンドラの箱を開いてしまった年で、今後、世界中に核が拡散する恐れがある。きっかけは、米英独仏露中の六カ国とイランとの間で結ばれたイラン核問題に関する合意。

 

この合意は1979年のイラン革命以来、続いてきたアメリカとイランの対立に終止符を打つものだが、この合意ができたとたん、イランが後押ししているイエメンの内戦激化が始まり、ヒズボラの攻勢も強まった。

 

つまり、シーア派勢力(※第三勢力)が活発化したのはイランが事実上の核カードを使い始めたことを意味する。いずれNPT(核拡散防止条約)体制は崩れる。

4章.中東における核の拡散


イランの核保有をきっかけに、数年後には核拡散がおきる

 

またサウジアラビアとパキスタンで秘密協定が行われた。これは、同じイスラム教スンニ派のサウジアラビが核兵器資金を提供し、その代わりイランが核兵器を持った場合にパキスタン内の核弾頭のいくつかをサウジアラビアに移すという協定

 

これが実行されると、カタール、オマーン、アラブ首長国連邦など(※第一勢力)もパキスタンから核を買えるようになる。エジプトは自力開発するし、ヨルダンも自力開発する。

 

恐ろしいのはイスラム国が核を持つことで、その技術を提供する可能性があるのはパキスタン。パキスタン内にはイスラム国に共鳴する人がかなりいるという。

5章.トルコ系イスラム勢力の総決起


これらの勢力のほかに、西アフリカから中国には「スンニ派のイスラムベルト」があるのをわすれはいけない。トルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、キルギス、中国の新疆ウイグル自治区

 

現に1930年代と1940年代には、現在の国境をまたぐ形で「東トルキスタン共和国」というイスラム国家が一時的に成立した。もしウイグル地域に「第二イスラム国」が出現したら、中国は、安全保障上、西方を向かざるをえなくなる。

 

中央アジアのカザフスタンやタジキスタンなど「スタン」という名のつく国は皆、トルコ(チュルク)系民族。これらの勢力が総決起すると第五勢力ができあがる。同じトルコ系スンニ派のトルコが後押しする事は間違いない。

6章.クルド人悲願の独立は?


そのほかにはクルド人勢力がある。

 

クルド人は「独自の国家を持たない世界最大の民族」。宗教的には大部分がイスラム教スンニ派。トルコ、イラク北部、イラン北西部、シリア北東部にかけての地域に居住していて、この一帯はオスマン帝国時代は「クルディスタン」と呼ばれていた。

 

ところが、第一次大戦でオスマン帝国が崩壊し、英仏の秘密協定「サイクス・ピコ」協定によって、一方的に国境線がひかれ、クルディスタンはトルコ、イラク、イラン、シリア、アニメニアなどに分割された。

 

2500万から3000万に及ぶと見られる人口規模にもかかわらず、各国に分割されたため少数民族扱いされている。各国にバラバラにされたクルド人が団結して「クルディスタン」の独立を果たすのが彼らの悲願