生態学

生態学 / ecology

生物と環境の相互作用を研究する学問


概要


生態学(せいたいがく、英語: ecology)は、生物と環境の間の相互作用を扱う学問分野である。

 

生物は環境に影響を与え、環境は生物に影響を与える。生態学研究の主要な関心は、生物個体の分布や数にそしてこれらがいかに環境に影響されるかにある。ここでの「環境」とは、気候や地質など非生物的な環境と生物的環境を含んでいる。

 

生態学の問題は、はじめから機能的である。社会的・心理的である。個別的よりも連関的であり、生得的よりも形成的であり、固定的よりも歴史的である。

 

 

生態学は、生物的秩序と人間的秩序の媒介理論たろうとしているのである。「家」は原意において、住居としての家を意味するとともに、そこに住まうものおよびその日常の生活活動一般をも意味する。「エコロジー」も生活する有機体の生産活動を、個体としてのみならず、錯綜せる生物相互の交渉過程として、そのすみ場所ないしは環境との相互関係においてとらえてゆく。

 

 

環境


環境とは、具体的には生活の場である。生活の場とは、かれの生活に必要な、また何らかの関係をもつ、もろもろの事象によって構成せられたところの、具体的な空間である。生活体は、生活の場において、その場の個々の構成物と、機能的に連関しあうことによって生きている。

 

主体と環境、すなわち生活体と生活の場との関連は、相互的である。環境が主体におよぼす作用を、われわれはアクションとよび、主体が環境におよぼす作用をリアクションとよぶ。アクションとリアクションは、つねに相互的かつ同時的に作用する。生活の場を構成する諸事物は、その場に生活するものに働きかけて、その生活の内容を与えるとともに、それを制約し拘束する。同時に、生活する主体は生活の場の個々の事物に働きかけて、その存在の意義をみとめるとともに、それを変形し、改造する。

 

相互作用の過程はとどまるところがない。変形され、改造された環境は、新しい仕方において主体に働き返す。すでにして場の影響をうけた主体は、さらに新しい仕方においてまた環境に働き返す。アクション・リアクションの作用様式は、相互的・同時的であるばかりでなく、相加的・漸進的である。

 

 

科学としての生態学のしなければならない仕事の1つは、こうしたアクションとリアクションの対応表・関係表の作成である。系の構成要素間の機能的連関を、系自身の運動をとおして理解することである。それによって、われわれは、初期条件を与えた場合、その主体・環境系の変化してゆくであろう有様をも予言できるし、あるいは、時には、系の構成要素の一部を操縦することにより、系全体を運転しうる。

 

 

サクセッションとクライマックス


環境一連の変化を、サクセッション(遷移)と呼ぶ。サクセッションの特徴は、草原→マツ林→カシ林というように、しだいに大型の、そして蓄積量の大きい群落におきかわってゆくこと、最後にはひとつの終点、安定した群落に達して終わるということである。この終点となる安定した群落を、クライマックス(極相)という。

 

サクセッションの経過は、いろいろな環境条件の植物に対するアクションと、植物のそれに対するリアクションとが組み合わさってまったく自成的におこる。そして、この植物=環境系のうごきを規定して、その到達点であるクライマックスの型をきめるものは、気候であることを、クレメンツは明らかにした。

 

この理論にしたがえば、われわれのまわりに千変万化する植物共同体の類型は、すべてサクセッションのいろいろな段階をあらわしていることになる。だから注意深く観察すれば、そのあいだには、おのずからダイナミックな発達のすじみちがあらわれており、どれがクライマックスであるかが見つかる。

 

 

人間生態学


動物の生活が、植物的自然の上に成り立っていると同様に、人間の生活は、植物的・動物的自然を基礎として成立する。植物と動物との存在を前提として成立する、人間を主体とする主体=環境系においては、植物も動物も、ともに環境の構成要素の1つである。

 

新しい生物の出現は、つねにその出現以前の世界の秩序を前提とする。新しい生物の生活は、つねに既存の生物の生活との相互交渉の上に成立する。それは新しい構成要素の出現による系の再編成であり、新しく出現した生物の立場からいえば、それは、既成の世界組織を環境要素とする新しい主体=環境系の建設である。

 

パークは、人間の社会を、まことにあっさりと「生物的」「文化的」の2つの水平面にわけて考える。前者はコンペティションに基礎をもった共生的な秩序であり、後者は、コミュニケーション、伝統、制度、道徳などに基礎をもった文化的秩序である。前者の下部構造の上に、後者の上部構造が立つ。

 

人間生態学の研究対象は、前者、すなわち、社会における生物的・共生的水平面であるという。かれは、主として都市あるいは、都市を中心とした地域の、地域共同体としての人口学的・社会学的構造を執拗に追求する。現象的にあきらかにされた地域構造の説明には、サクセッション理論がそのまま導入され、時価をめぐるコンペティションによって、そのサクセッションの進行を説明する。

 

●参考文献

・「生態学入門」梅棹忠夫/吉良竜夫