世界史34 大英帝国5「社会主義の誕生」

赤色革命



産業革命の進展とともに、労働者階級が増大し、また識字率が向上すると、労働者たちは政治に目覚め、労働者自身による権利獲得の運動がおこった。イギリスでは、労働者階級の参政権は認められていなかった。


イギリスでの労働者階級の最初の政治運動がチャーチスト運動である。この運動は、集会を開いたり、署名を集めて議会に請願を繰り返すという、どちらかといえば穏健な運動だった。1848年くらいまで、運動は継続するが、議会はこれを受け入れず、チャーチスト運動は成果無く終わる。


労働者階級の貧困を解決しようとする思想も生まれてきた。経済的繁栄の裏側で、数百万の貧困層労働者が、みじめな暮らしを送っていた。新たに資本家と労働者の階級対立と抗争を生み出した。こうした状況を踏まえて、社会全体のあり方を根本的に変革すべき行動が生まれてきた。社会主義思想である。

 

まず、サン・シモン、フーリエ、ロバート・オーウェンらの空想的社会主義」が現れた。資本主義のもつ矛盾をするどく批判して、搾取のない平等な労働者中心の理想社会を構想した。

 

実際に、オーウェンは、新しい社会の理想計画を実現させるためアメリカにわたり、ニューハーモニー村を建設して、愛と協同による人道主義的な共産村をつくろうとした。自給自足をめざした農場や工場をつくりましたが、結局成功せず全資産を失い失敗した。ヒッピー・カルチャーやヤマギシ会やオウム真理教など現在のカルト教団のユートピア建設の先駆けのようなものである。

 

オーウェンのユートピア建設は失敗したが、ほかに工場法の制定や、労働組合・協同組合の育成にも貢献し、さらに世界で初めて幼稚園を創設するなど革新的な事業を企てた。


社会主義思想の最高峰に立つのが、カール・ハインリヒ・マルクス(1818~83)とフリードリヒ・エンゲルス(1820~95)である。ともにドイツ出身ですが、活動したのは主にロンドン。とくにマルクスの天才と血のにじむような研究とに生み出された思想は、社会主義を「空想」から「科学」へと発展させた。

 


マルクスの目標は2つあった。社会における貧富の格差の解消と、社会の中に自分を位置づけて生きがいを感じさせる、そのような社会システムを実現することである。


共著の「共産党宣言」「資本論」は必ず覚えること。「共産党宣言」の最初のと言葉「ひとつの妖怪がヨーロッパを歩きまわっている-共産主義という妖怪が」と、最後の言葉、「万国の労働者、団結せよ!」は、あまりにも有名。今でも、北京天安門広場前の紫禁城の城壁には、「万国の~」スローガンが毛沢東の肖像とともにかかっている。


かれらは、資本主義経済の分析からはじまって、国家論、歴史、哲学などを含む膨大な思想体系を作り上げた。これをマルクス主義という。マルクス主義が、後世の人文社会科学全般にあたえた影響ははかりしれないものがあある。なぜ、大きな影響力を持ったかというと、1917年、ロシアのレーニンがマルクス主義思想にもとづいて革命を成功させ、ソビエト社会主義共和国連邦を建設したからである。

 

日本でもかつて、「マルクス」というものが、神のごとく信じられていた時代がありました。今の団塊世代です。マルクスこそは、正義の使者であり、予言者であり、希望の星であると信じ、マルクスのためなら、命を捧げていいと考えていたた。自分の友人、知人がマルクスの「毒」にやられて、困った状況になったという体験くらいはあるはずである。


ソ連の崩壊によって、現在マルクス主義もほぼ消滅状態だが、昔のマルクスの原理をそのまま現代に活かすということないが、マルクスの原理を踏まえた上で、新たなビジョンが21世紀において生まれるということは、十分にありえる。