世界史30 大英帝国1「産業革命」

資本の蓄積とイノベーション



ヨーロッパの歴史にとっては、ゲルマン民族の侵入以降に経験した、もっとも大きな変化が起こった。それが産業革命である。機械をもって大量生産を可能にした変革は18世紀後半にイギリスを先頭にしておこり、ほかの国々に影響を与えていった。ちょうどフランス革命の頃と並行していた。


農民と職人によってなりたっていた社会が、約1世紀半という短い期間のあいだに、機械と会計をあやつる人びとの社会へと変貌していった。新しい形の都市が生まれ、新しい学校や新しい学問が必要になるなかで、人びとの日常生活がすっかり新しくなった。

 

イギリスで率先して産業革命が成立したのはなぜか、これは複数の条件が重なりあって起こったことだと言われている。

 

●資本の蓄積 

まず、1790年から1810年までの20年間に、ヨーロッパ大陸ではフランス革命による戦火が広がっていたことから、資本がヨーロッパ大陸を逃れてロンドンに集まってきた。集められた資本やイギリスの繊維産業から生じた超過利潤は、さらに産業に投資されていった。また、当時、イギリスは政治的にも安定しており、政府がヨーロッパ大陸の各国ほど税金をしぼりとろうとしなかった事も大きかった。ヨーロッパで最も資本の蓄積と投資の循環がうまくいっていたというのが理由の第一に挙げられる。


●新技術の導入

また、イギリスでは、当時、エネルギー不足に悩まされていた。イギリスの乏しい木材資源は戦略性の高い海軍の軍備用であり、また、イギリスには高い山がなかったことから、水力紡績機の利用に便利な急流な河川がなかった。そこで、イギリスでは不足する木材エネルギーの代わりを見つけるために、フランス人物理学者デニス・パパンが発明した蒸気機関に注目し始めました。当時、フランスには木材資源が豊富にあったことから、パリではこのフランス人物理学者の革新的技術は無視していた。


そこで、イギリス人ジェームズ・ワットが蒸気機関の特許権を取得。ジェームズ・ワットといえば、蒸気機関を発明した人のように思われるが、実際は、特許を取得して、小型化・改良した人である点も注意です。現在でもよくあることである。

 

たとえば、スティーブ・ジョブズなんかがそう。パソコンに必要なさまざまな技術やパーツを最初に開発したのはアップルではない。ゼロックスPARC社だ。だがアップルはそうした技術やパーツを組み立て、スタイリッシュなデザインに仕上げ、一般ユーザーでも使いこなせる手頃な価格のパソコンを作った。

 

そうして、蒸気機関は1785年にエドモント・カートライトが発明した新たな力織機の動力源となった。これによって綿紡績の生産性は10倍に向上した。これはまさに機械化の勝利であった。

 

●変化を受け入れるだけの心の準備
イギリス社会には、巨大な社会的変化を受けいれるだけの心の準備も整ってた。18世紀のイギリスでは、かつてなかったほど金儲けやビジネスに対する関心が高まっていた。さらには人口の増加によって、豊かな労働力が確保されるとともに、工業製品に対する需要も増大していた。


「資本蓄積と投資の好循環(金)」「新技術への注視と導入(科学技術)」「変化を受け入れる心(適応力)」こうした3つの条件がすべて重なった結果、後世から産業革命とよばれることになる、前例のない規模での工業化が進行することになった。