ジャック・アタリ「危機とサバイバル」6

第六原則「ユビキタス」


あらゆる状況に適応できる「ユビキタス」な能力を持て。

危機・欠乏・弱点をチャンスに変えることができず、どうしても打開策が見つからないのであれば、これまでの自己のアイデンティティをいつでも急変させる能力を準備しておくことである。


自分の過去、つまり、自分が今まで作り上げた人生・家族・友人・野望・価値観・功績・名誉・成功・計画を忘れされること。そうして、それらの関係が届きづらい別の場所で暮らすよう心がけること。複数の人生を再構築すること、過去をあっさり捨て去る能力が必要である(意識的に捨てても無意識に残っているだろうが)。


いつでも捨て去り、できるかぎり身軽に生きる準備をしておくことがサバイバルには必要である。そのためには、定住民としてモノは抱え込まず、アイデア、経験、知識、人間関係、移動しやすい財産だけを蓄積し、所有する意義は完全に切り離すことである。


自分自身を身軽にする一方で、サバイバルには、複数の帰属先を持つ能力、複数の文化に参入する能力、数化国語を操る能力、複数の思想や宗教を受け入れる能力について真剣に考えなければいけない。


または、パラレルに生きることであり、パラレル能力はキリスト教に改宗したユダヤ人のマラーノが、二者択一を迫られた世界で生きる際の教えである。キリスト教迫害を受け、「マリア観音」の発明も似たようなものである。


つまり、「ユビキタス」な能力とは、自分が今まで信じていた真実や価値観が無力化してしまった世界と、他者が押し付けてくる信じられない真実が支配する世界との狭間に生きる人物の知恵でもあるのだ。


そうはいっても「自己の尊重」を踏みにじってはならない。自らのアイデンティティにおいて常に機動的にある必要がある。