ピーター・ドラッカー「ネクスト・ソサエティ」

ネクスト・ソサエティ 

歴史が見たことのない未来がはじまる


概要


「ネクスト・ソサエティ」は、2002年にダイヤモンド社から刊行されたピーター・ドラッカーによる未来予測書。

 

ドラッカーは未来を予測する際、「すでに起こった事象」から推測する。たとえば子どもの生まれた数が30万人減ったとする。すると、6年後に小学校に上がる子ども数が前年と同じということはありえない。小学校にとってはとんでもないことが起こる。すでに起こった事象を観察すれば、それがもたらす未来が見えてくる。「起きそうな事」ではなく「起きた事」から未来の流れをシミュレーションする。これがドラッカーの基本的な未来予測である。ドラッカーはそれを「すでに起こった未来」と名付ける。


本書「ネクスト・ソサエティ」の主題となるもの、「すでに起こった事」は、少子高齢化による人口構造の変化である。人口構造の変化からドラッカーは未来ビジョンを描く。特に出生率の低下とそれにともなう若年人口の減少、また製造業の地位の変化、雇用形態の変化などが書かれている。また、未来に起きる現象とその対処方法も提示している。


■人口構造の変化

少子化による若年人口の現象は重大な意味を持つ。先進国の場合、これからは大量の若年移民を受け入れないかぎり、人口労働力の確保できない。労働力が確保できないと年金の受給ができなくなる。遅くとも2030年には先進国で退職者が年金受給できるのは75歳以降となる。


年金の受給が難しくなることから、今後は75歳まで労働する必要がある。また高年人口の増加は、雇用関係にない人達、社員でない人達が増えることでもなる。したがってフリーランスの高齢者をいかにマネジメントするかが重要になる。


若年人口の減少にともない移民の流入が増えると、文化と市場が多様化する。第二次世界大戦後、あらゆる先進国が、ただ1つの文化と1つの市場にもつようになったが、今日進行中の人口構造の変化は、それら単一化したマス文化と市場に大きな影響を与える。


■知識労働者

これまでは製造業の肉体労働者が労働の中心だったが、今後は知識労働者(ナレッジ・ワーカー)が中心となる。知識労働者とは要するに專門家で、医者、弁護士、教師、会計士、エンジニアなどを指す。知識労働者には2つのものが不可欠である。


1つが知識を身につけるための学校教育である。もう1つが、その知識労働者としての知識を最新にアップデートするための継続教育である。これまでは学校は仕事につけば終わりだったが、知識社会では生涯学習が重要となる。そのため知識労働者のための学習補助産業が成長産業となる。


知識労働者の増加と製造業の衰退は並行する。製造業はかつての農業が歩んだ道をたどることになる。



■保護主義の台頭

移民の流入と製造業の衰退が進行していくと、保護主義が台頭する。保護主義は経済的な利害と政治的な力学に加え、情緒的な郷愁と偏狭なナショナリズムの両輪によって勢力を伸ばす。だが、そこからは何も生まれない。成熟産業に対する保護は無効である。作業を保護することに金をつぎ込むなら、一時解雇された高年者を助け、若年者を再教育するために金を使うほうが有効である。


■日本

日本は製造業雇用が全就業者数人口の4分の1という先進国では最高の水準にある。社会心理的にも、日本は製造業の地位の変化を受け入れる心構えはできていない。製造業の地位の変化が日本の大問題であることはちがいない。さらに、日本は口問題についても解決していないことから、今後の高齢者の生活はどうするのか不思議である。