世界史14 資本主義の夜明け

新たなる支配階級「商人」



ヨーロッパ大陸では、新たな勢力が出現しはじめ、秩序を形成しつつあった。「商人」である。この今まで視界に入らなかった勢力のかすかな革命的な動きは、王国の隙間をぬって入り込んできた。


11世紀~12世紀に鉄製農具の普及と開拓によって「農業革命」が起こり、余剰食物による富を使って、商人の交易が盛んになりはじめた。こうした経済の活性化によって、ヨーロッパ各地に商人の交易場である都市ができ始めるようになる。

 

また、十字軍の刺激は大きかった。十字軍遠征のため、内陸商業はいうにおよばず、イタリア商人によって東方との遠隔地商業が頻繁におこなわれるようになった。現在でいえば戦争特需である。日本も朝鮮戦争のおかげで経済が回復した。また、十字軍の影響で宗教心の冷却による教皇の権威の失墜、封建貴族武士の死没による封建制度の衰退、封建社会の花形といわれた武士が、世の変動で落ちぶれていった。

 

こうしたなかで、ギリシア・ローマ時代以来、縮小していた貨幣経済も復活し、経済力がものをいう世の中になってきた。つまり、資本主義の夜明けといってもいいだろう。これまでは土地を所有することが権力をうる手段だった。だからこそ、封建領主が大威張りできた。こんどは、「力」や「土地」ではなく「金」を持つことが権力手段となりはじめた。「地獄の沙汰も金次第」ということになる。


商業によって裕福になりはじめた都市の商工業者は、封建領主に金銭上の援助をする代償に、かれらにせまって自治権を要請した。そして「都市の空気は自由にする」ということわざにいわれるように、沈滞した社会において、ひとり都市と都市民に活気がみなぎった。市場の秩序が忍び寄った村においては、より「自由」に思考することが可能になった。

 

商人と金融業者から構成される新たな指導者階級は、自らの自由こそ至上の徳であると説いた。商人エリートたちは、物流、創造、伝達、学問、蓄財の自由を組織しながら、かつてのユダヤ・ギリシアの「物質的に裕福になること」「地上の未来が過去よりも素晴らしいものになる」の理想を掘り下げていった。彼らは中世ヨーロッパ全体の価値観だった、キリスト教の貧困への称賛を巧みに避けていった。


十字軍時代以後、ジェノヴァ・ピサ・ミラノ・フィレンツェなどのイタリア諸都市が伸長した。特にフィレンツェは毛織物工業、絹織物工業、金融の中心地として栄え、メディチ家のようにルネサンス運動の保護者となる大資本家も現れた。

 

そして1434年、ヤン・ファン・エイクは、絵画史上、はじめて商人の肖像を描いた。これはブルージュに滞在していた二人のフィレンツェ人、アルノルフィー二夫婦を描いた肖像画であり、在俗の個人が芸術に関与しだしたことを示している。資本主義の時代が始まった。