18.世界都市

世界都市 / Global City

国民国家から都市国家へ


概要


今日の経済の中心は、疑いもなく「都市」にある。30億人以上の人が、現在都市に住んでいるが、これは世界の人口の50%である。

 

さらに毎年6000万人が都市に移動している。2050年までに、地球人口の70%以上が都市に移り住むだろう。

 

アメリカは「国家」としては相対的に衰退する道をたどってはいるものの、個々の「都市」は今後は発展していく。近代は、国家が主役であった。「世界は国民国家の総体であり、まとまりを持つ国民国家が主役となって世界を動かしている」と考えるのは時代遅れだ。国民国家の時代は終わった! 現在世界を動かしているのは「都市」である。40の都市部と呼ばれる地域が世界経済の3分の2を占めている。


ドバイのような港湾都市や自由貿易都市は、ヴェネチアの21世紀版といっていったところだ。中世のハンザ同盟のような自由な都市の同盟が形成されつつある。現代の世界において、都市と国家を区別して考えることは重要である。

 

今、ニューヨークは世界で最も重要な都市として姿を現し、ロンドンや東京を大きく引き離している。リーマン・ショックが起きたときでも回復は実はかなり早かった。デトロイト、クリーブランドなどほかの都市は大打撃を受け、現在も財政破綻状態にあるが、ニューヨークは打撃の度合いは少なかった。ニューヨークは混雑して物価も高いといわれるが、そのアドバンテージはさらに広がっている。

 

そして今起こっているのは「グローバルシティ(世界都市)」の勃興である。政治的、経済的、文化的にも重要性が高く、価値のある都市としてニューヨーク、次にロンドンがあげられる。東京は日本において圧倒的に支配的に都市で、今後も東京は日本で一極集中化して、大阪や名古屋を引き離していくだろう。同じようにアメリカではニューヨークが東海岸では圧倒的に支配になる。これはアメリカが日本化しているということでもある。

 

都市が発展する要件は、テクノロジー、才能、そして何より寛容性である。イノベーションやハイテク産業の集積がテクノロジーとなり、その魅力に惹かれて才能のある人たちが集まる。なかでもトップに立つ都市と、そうではない都市の違いは寛容性にあるといってよい。

 

最も寛容性の高い都市は、ニューヨーク、テクノロジーという点でみればシリコンバレー、ほかにシンガポール香港トロントバンクーバーシドニーメルボルン、音楽のタレントを結集した都市ではナッシュビル、スペースを効率的に使っている点では東京である。しかし、東京の欠点は、日本全体にいえることだが寛容性の欠如である。東京は世界においてもクリエイティブな都市であることは間違いなが、やはり均質性が強すぎる。それがオープンさの欠如につながっており、その欠如のために、東京はかなり損をしている。優れた人材を集めるためには、英語は非常に重要な要素である。

 

生産性、効率、競争力などにおいてもっとも強力な国は北欧諸国であるが、彼らは完璧な英語を話す。もはや英語こそが世界の中心であることは疑いようがない。すべてのグローバルタレントは英語を話す。だからこそ、英語が通じない都市はどうしても魅力にかけている。

芸術首都


アートワールドの中心的な活動場所で重要になるのは「都市」である。「国家」ではない。アートワールドの人々の多くは、国境を超えて活動するので、国家観念には希薄である。そのため彼らにとっては、「アメリカ」「日本」「中国」よりも、「ニューヨーク」「東京」「香港」といった都市観念が重要になる。

 

芸術活動が盛んな都市は 「art capitals(芸術首都)」と呼ぶ。  芸術都市で重要なのは、ニューヨーク、ロンドン、ロサンゼルス、ベルリンの4都市。続いて北京、ブリュッセル、香港、マイアミ、パリ、ローマ、東京。

高齢都市


高齢化はもう世界各地で始まっている。高齢化する世界では、外国人の熟練労働者を最も引きつけられる国が最もうまくいくだろう。この結果、先進国では、本国の高齢者と移民の若者という人口構成が一般的なモデルとなるだろう。

 

教育水準の相当高い労働力と企業にやさしい環境を提供している国々で、現在の「若年層過多」が成熟して「労働者過多」になり、新たな経済の「トラ」が台頭する可能性が生まれる。彼らは高齢化した先進諸国にでかけ、なかでも若く優秀な人材は、グローバル化した労働力として引っ張りだこになるだろう。トルコ、レバノン、イラン、モロッコ、アルジェリア、チェニジア、コロンビア、コスタリカ、チリ、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどがあげられる。

 

最貧国が将来の人口構造上の強みを新たな熟練労働力に変えて、高齢化した世界のケアに役立てられるかどうかは、極めて重要な問題だが、答えはまだわからない。若い人間が大勢いれば、それですむものではない。教育、統治、安全保障の面で大幅な向上も必要だ。テロを十分制して、若い労働力を必要とする国が外国からの移民を受け入れるようにしなければならない。このような移民は、ソマリア、アフガニスタン、イエメン、ヨルダン川西岸とガザ地区、エチオピア、それにサハラ以南のアフリカの大半からやってくる。

 

また高齢化する世界は、現在女性の雇用に消極的な国や地域では、将来の女性の雇用にとっても、いい前兆だ。宗教的理由や文化的な理由で女性が働かない国では、2050年までに、そうしたしきたりを捨てようという経済的な動きがしだいに強まるだろう。(2050年の世界地図 ローレンス・C・スミス)

都市建設の失敗


都市が急速な人口増加と経済成長を呼び込むには、暮らしやすくするようにインフラを整えなければならない、という決まりはない。ナイジェリアのラゴスを見るといい。「ラゴスに行けば稼げる」という理想が国民の間にあって、周囲の地方や村からナイジェリア人が詰めかけた。そのため、ラゴス市内には部屋がなくなって、島じゅうにあふれた出稼ぎ労働者が、橋を渡って24キロ以上内陸まで溢れ出している始末だ。

 

ラゴスは、インフラ整備が整わないまま人口と経済成長をしたため、交通渋滞、不衛生、腐敗、殺人、病気だらけの、詰め込みすぎの暗黒郷だ。何百万人もが電気もなく不衛生な船上生活を送っている。女性の10人に4人は字が読めない。警察は手が足りず、無力で、何をしでかすかわからない。物理的インフラはもうめちゃくちゃだ。

 

ラゴスの洪水問題は深刻だ。都市の極端な成長は、市内で最後に残った土地、海面すれすれの低い湿原にまで開発を推し進めた。人間の排泄物が蓋のないドブを流れている。排水がお粗末なので、雨が降るとそれが家の中に入ってくる。水道があるのは100人中15人未満で、ほとんどの人は屋外の共同の水道か井戸に頼っている。水源はほとんどが大腸菌、連鎖球菌、サルモネラ菌にしょっちゅう汚染されている。

 

当然ながら、病気が猛威を振るう。腸チフス、黄熱病、ラッサ熱、マラリア、レプトスピラ症、住血吸虫症、肝炎、髄膜炎菌性髄膜炎、HIV、エイズ、H5N1型の鳥インフルエンザなどだ。人間の平均寿命は男性がわずか46歳、女性が47歳にとどまっている。

 

強盗、暴行、殺人は日常茶飯事だ。警察も司法も頼りにならないので、市民は「バカシ・ボーイズ」などと称する自警団を組織市、なたや散弾銃で反撃する。警官が、容疑者かもしれない人間を逮捕するのではなく、いきなり撃つこともめずらしくない。

 

ナイジェリアのGDPがアフリカ大陸第二位に伸びているにもかかわらず、ラゴスはスラム街であり、アフリカ、アジア、中南米の他のスラム街と同じように、好ましくない都会の実例そのものだ。