10.ジョージ・ソロス「再帰性の哲学」

ジョージ・ソロス / George Soros

再帰性の哲学


概要


ジョージ・ソロス(1930年8月12日^)はハンガリー生まれ、アメリカの実業家、投資家、哲学者。ソロス・ファンド・マネジメント会長。"イングランド銀行を潰した男"として知らており、米ドルで100億ドルに相当するポンドの短期売を行い、自身は10億ドル稼ぎだし、「1992年ブラック・ウェンズーポンド危機」を引き起こした人物である。世界第最も金持ちな人の一人。


ソロスはプログレッシブ・リベラル支持者としてよく知られている。1979年から2011年の間に、健康関連や教育関連へ80億ドルの寄付を行っている。また1984年から1989年における東ヨーロッパにおける共産主義から資本主義体制への平和的な移行において重要な役割を果たしており、またハンガリーのブタペストにある中央欧州大学にヨーロッパで最も多額の寄付を行っている。ソロスはまたオープン・ソーシャル・ファウンデーションの委員長も務めている。

哲学


再帰性


私の哲学の核心は、二つの比較的簡単な命題に要約できます。1つめの命題は「思考する参加者がいるような状況において、参加者の世界観は常に部分的でしかなく、しかも歪んでいる」というものです。これが「可謬性の原則」です。

 

もう1つの命題は、そうした「歪んだ状況認識は、その結果として発生する状況参加者の不適切な行動を通じて、状況に対して影響を及ぼしうる」というものです。認識が誤っていれば、その誤った認識にもとづいて発生する行動は、必然的に不適切になるわけですが、これこそが「再帰性」の理論です。

 

問題の本質についての誤解がまずあって、その誤解が不適切な行動を起こし、どんどん周囲に悪影響を与えていきます。このほかにも「政府は悪だ」と言い続ければ、政府の質が実際に下がるという結果も生じる、などという例も考えられます。そして人間的事象には「再帰性」があるという現実を無視したまま、人間の行動における確実性を学問として追求してきたのが、いわゆる社会科学なのです。


認知機能と操作機能


「再帰性」の概念は、もう少しきちんと説明する必要があります。私たちは世界の一部であるために、その世界を完全な形では理解しえない。一方で人間は、自分が生きる世界を知識として理解しようとする。私はこれを「認知機能」と呼ぶ。

 

その一方で人間は世界に影響を与えようとし、自分にとって都合のよいように改造しようともする。かつて私はこれを「参加機能」と呼んでいたが、今では「操作機能」と呼ぶほうが適切であると考えている。

 

認知機能と操作機能とが同時に作用している場合、その社会現象は参加者の未来に対する意図や期待によっても構成されることになる。「過去」はすでに決定しているが、「未来」は参加者の決断によって決まってくる。また、2つの機能が同時に発生すると、両者が相互干渉を起こします。その結果、社会的事象においては、参加者の意図と実際の行為、そしてその結果との間に、必然的にずれが発生するのです。現実に対する理解についても、実際に起こる事柄についても不確実性が入り込んでしまうのです。