09.ソクラテス「懐疑家」

ソクラテス / Socrates

懐疑家


概要


ソクラテス(紀元前470年-399年)は古代ギリシアの哲学者。西洋哲学創始者の一人。


ソクラテス自身は、書き言葉は「死んだ言葉」として嫌っていたため著作を残していない。そのため、当時の書記たち、特に弟子だったプラトンやクセノポン、ほかに同時代の詩人アリストパネスたちの文書を通じてからしか、その思想が分からない謎めいた人物である。


現在はプラトンの『対話』がソクラテスに関する情報が最もまとまった資料とみなされている。プラトンの『対話』によれば、ソクラテスは、古代ギリシアにおける倫理学への貢献、また「ソクラテス式問答法(反対論証法、弁証法)」で、有名になっていた人物であるという。


特に「ソクラテス式問答法」は、現代においても討論の場において、広く利用される有効な弁論術である。また教育学においても、個々の問題解決策を引き出し、問題の本質を洞察するための手段として重要視されている。


プラトンのソクラテス解釈は認識論においても重要で、後の西洋哲学の創設においてソクラテスの思想は強い影響を及ぼした。

倫理学


善く生きる


あらゆる知識の根底に「善」についての認識、運動が善いと思われる方向に向かわなければならないというソクラテスのこの考えは、いわば、理論理性に対する実践理性の優位の主張する革新的な思考の転換だった。


ソクラテスは「もっとも大切にしなければならいなのは、生きることではなくて、善く生きること」である。すなわち、ただ生きつづけることは人間の生ではない。人間の生は人間らしい生でなければならず、それは「善く生きる」ということである。人間を人間であらしめている根本的特徴はその倫理性にある。


そして、人間の生き方についての知恵「いかに生きるべきか」という問いに対する解答を探求し続けた。主題はいつも正義、節制、勇気、知恵、敬虔などの徳である。


「善く生きる」とは何かと議論する際に、ソクラテスは、それまでの自然学者が説明するような「善く生きるとは○○である」という状態の説明には満足しなかった。ソクラテスは、「ではなぜ、善く生きるとはその状態であるのか?」という理由をひたすら探求した。


たとえば、宇宙の秩序について、自然学者はただ原初の渦巻とか元素の相互作用とかについて語るだけで、なぜ宇宙をそのような秩序のうちに統括しようとするのか、なぜその秩序になったのかという理由については考えないことに、ソクラテスは絶望したのである。


そして「正しく生きることが、もっとも大切である」という大原則から、いかなる帰結が出てくるか。それは「いかなるしかたでも不正を犯してはならない」ということであり、「たとえ不正を加えられても、不正の仕返しをしてはならない」ということなのである。


ギリシア人の倫理では「敵を徹底的に害すること」は許されていたのではなく、賛美されいたことから、この思想によってソクラテスがギリシア人の伝統的倫理の根幹を切り倒している。