【作品解説】エリック・ホッファー「波止場日記」

ホッファー50歳後半の備忘録


概要


エリック・ホッファーの50代後半、1958年6月から59年5月にかけての日記をまとめたものである。


沖合士としての日々の業務日報、仕事場で遭遇した普通のアメリカ人、黒人、移民、下層外国人たちに関すること、そしてホッファーの生涯のパートナーであるリリー・ファビリとその息子リトル・エリックとの交流記録が中心となっている。

 

彼ら大衆との交流から紡ぎだされる感情や思想は、ほぼホッファー自身に関することでもあり、そこでは学歴や教養よりも、人間としての優しさや、明るさ、真面目さ、楽しさの方が大事なのだということが主張されている。

 

また、この時期(1958~59年)のホッファーは、三冊目の著書「The Ordeal of Change(『変化という試練』(1963年刊))や、知識人に関する本(刊行されず)へ向けて執筆の準備をしていたこともあって、急激な環境の変化が人間に及ぼす影響(熱気、信念、熱中、大衆運動)や、変化一般に関する思索メモが随所見られる。

 

特に知識人の心理状態に対して強く言及している。ホッファーは、知識人に対して、仕事場やプライベートの仲間たちとは異なり、強い反芻と敵意に満ちた感情を持っている。というのは、ホッファーは常に「無名の大衆」の立場にたち、「大衆 対 知識人」という対立を基本的な構造にして社会的発言をしているため、本書で使われる「知識人」という言葉は、ホッファー独特の意味で使われている。

 

ホッファーの場合、〝実際の労働に従事しているか否か”ということが、大衆と知識人を区別する1つの基準となっており、黙々と実際の仕事に従事する大衆に対し、労働に従事しないばかりか、労働に従事している人間を言葉によって操作・管理・支配しようとする知識人に対してよく思っていないようである。

 

知識人に対する不満を持っている人、階層社会化していく未来の日本社会での生き方を参考にしたい人、ノマドとして自由奔放に生きたい人たちにとって刺激的な一冊といっていいだろう。ほかにも、人間の創造的環境、共産主義体制が及ぼす影響、ナショナリズムの高揚、国家の栄枯盛衰など人類学や文明論にに関するメモも多い。

  • 単行本(ソフトカバー): 272ページ
  • 出版社: みすず書房 (2014/9/11)
  • 言語: 日本語
  • ISBN-10: 4622083744
  • ISBN-13: 978-4622083740
  • 発売日: 2014/9/11
  • 商品パッケージの寸法: 19.2 x 13.2 x 2.6 cm

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